長唄・翔英会「あたま山」

長唄は歌舞伎や日本舞踊と共に発展してきた三味線音楽ですが、皆さんが耳にする機会は意外なところにもあります。

それは寄席です。噺家さんが高座に向かって歩いてくるときの出囃子の多くが実は長唄だったりします。古今亭志ん朝「老松」や柳家喜多八の「梅の栄」が好例です。

そんな落語と長唄の関係がより深まってできたのが「ユーモア邦楽・あたま山」です。今回のジャポニスムで聴くことができます。 

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元々は変な落語でして、ケチな男がさくらんぼの種を「もったいない」ってんで飲み込んじまった。すると頭のてっぺんに芽が出てくる。男はケチなもんだからこれも「もったいない」とそのままにしておいた。

そのうち頭の上に木が生えて、(元がさくらんぼだっただけに)桜の花が、今を盛りと咲き誇る。噂を聞いた人たちが花見に集まる、ひと儲けしようと茶屋ができる、三味線太鼓で呑めや歌えの大騒ぎ。さすがの男も今度ばかりは「もったいない」とも言っていられない。すっかり頭を抱えこんでしまい、とうとう頭の木を抜くことに。

力まかせに引っこ抜いたら、大きな穴が空いちゃった。痛くも痒くもないからと、そのまんま外を歩いてたら、雨に降られ、水が溜まって池ができた。

噂を聞きつけた人たちが今度は夕涼みに集まりはじめた。舟でも出して涼もうじゃねえか、おっいいね芸者でも呼んでパーッとやろうじゃねえか、てんでどんちゃんどんちゃんやかましくって寝られない。

男はもう耐えられなくなって、自分の頭の池に身投げして、とうとう死んじまったそうで。

上記は落語のあらすじ。とっても不思議な噺ですが、これが長唄になると…。

作詞は安藤鶴夫。「アンツル」の名で知られた昭和の落語評論家です。唄の中の男は独り者ではなく夫婦の物語になっており、最後のシーンは夫婦の心中への物語に発展しています。

さらに常磐津や木遣音頭など遊びがいっぱい入っているうえ、四季も織り込まれており、これは発明であり傑作なのです。

お囃子入りで舞台はより一層華やかになります。お囃子も長唄もいつもと違う表情を見せてくれると思います。これってすごく贅沢ですよ!

長唄・囃子の舞台は四柱神社12:00〜。
「あたま山」の他にも長唄三味線の魅力が伝わる「チンチリレン」など、遊び心たっぷりで皆さんをお迎えします!


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